油圧シリンダについて
油圧シリンダとは
油圧シリンダとは、シリンダ中のピストンを油圧(作動油)で動かし,ピストンに固定された棒の押出・引込運動で機械的仕事をさせる装置の事です。
アクチュエータとして油圧ジャッキ,押出機,建設機械,農業機械など産業用機器に広く利用されています。
油圧シリンダの特徴
油圧シリンダには下記のような特徴があります。
- 比較的小型の油圧ポンプで、大きな力を出すことができる。(空気圧機器よりも高圧で使える)
- 過負荷で止まった時に、動力系に悪影響を与えない。(電気モーターと大きく異なる)
- 出力や速度の調整が容易で遠隔操作可能である。
- 作動油自体に防錆・潤滑効果があり機器内部の摩耗が少ない。(パッキンは定期的に交換が必要)
油圧シリンダの作動原理
油圧シリンダはパスカルの原理を応用したものです。「水のテコ」と言えばよいでしょうか。
[ 図1 ]
図1をご覧ください。大きいシリンダの面積は、小さいシリンダの4倍です。
小さいシリンダに載せた10kgの重りは、大きいシリンダに載せた40kgと釣り合います。
つまり、小さな力がシリンダ面積に比例して増大するのです。
小さいピストンを40mm押し込んだときに、大きなピストンは10mmしか上昇しません。
小さいピストン径により供給された油の量だけ大きなピストンは上昇するため、上昇幅は面積と反比例します。
[ 図2 ]
油圧シリンダは、図2のようにポンプ部の「テコの原理」と油圧の「パスカルの原理」を組み合わせることで小さな人力でも大きなものを持ち上げることができるのです。
『油圧』と、「電動」・「空圧」との比較
油圧
産業機器・プレス機・自動車・建機等あらゆる場面で使用されています。
シンプルな駆動原理と、小型で大きな力が出せる点が特徴です。
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- 長所
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- 小型なユニット構成で大きな力が出せる。
- 比較的安定して制御ができる。
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- 短所
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- 接続が複雑になると継手などから油漏れなどのトラブルのリスクが増す。
空圧
広く製造の現場等で使用されている、馴染み深いものです。
空圧シリンダなどのアクチュエータがあります。
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- 長所
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- 高速運転が可能。
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- 短所
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- 制御性にやや難。中間停止は難しい。
- 油圧に比べ大きな力は出ない。
電動
モーターに機構部品を組み合わせた製品が電動アクチュエータです。
さまざまな自動機器の駆動源として利用されています。
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- 長所
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- 低速でも速度が安定しており、スムーズな過減速運転が可能。
- 多点停止の運転が可能。
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- 短所
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- 能力が大きいものは、油圧に比べ、ユニット構成が大型・重量化する傾向がある。
- 制御機器が別途必要。高額になりやすい。
上記2つの図では電動・空圧、そして油圧のメリット・デメリットを表しています。
「比較的大きな力が要る。」「中間停止したい。」「コストを抑えたい。」
そうした時、油圧は大変優秀なアクチュエータとなり得るものです。
油圧機器ユニットの基本構成
基本構造
油圧機器ユニットは、『油圧アクチュエータ(シリンダ)』『油圧ポンプ』『オイルタンク』『接続部品』『アタッチメント』の5つの構成要素から成り立っています。
- 油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)
- 作動油を送るための油圧ポンプ
※電動型ポンプはタンク一体型のためオイルタンクは必要ありません。 - 作動油を蓄えるためのオイルタンク
- 油圧アクチュエータ、油圧ポンプ、オイルタンクを接続するためのホース、カプラ、エルボ等の接続部品
- シリンダを設置、もしくは機器と接続するためのアタッチメント
油圧ポンプについて
油圧ポンプとは、上記「テコの原理」の「テコ」にあたるものです。
作動油をシリンダに送り込む役割をします。
油圧ポンプの最大のメリットは油圧回路と接続して シリンダを「遠隔操作」「動作制御」ができることです。
電動と手動、フット式の3種類があります。
- 手動(足踏み)ポンプ
手(足)でハンドル操作することでピストンを上下させることにより、
シリンダに作動油を送り込むポンプです。
- 電動ポンプ
電動モーターを動力にして、シリンダに作動油を送り込むポンプです。
流量について
油圧ポンプが押し出すオイルの量のことを「流量」または「吐出量」といいます。
手動(足踏み)ポンプの場合はレバーハンドル(つまりピストン)を一回ストロークしたときに、どれだけオイルを吐き出すか[L(リットル) / mm(ストローク)]を、電動ポンプの場合は1分間に何リットル流れるか[L(リットル) / min(分)]を単位とします。
シリンダの内圧と出力の関係
ポンプが油を押し出して、シリンダ内に供給することでシリンダのラムシャフトは伸びていきます。
シリンダに掛かる荷重は、ラムシャフトが伸びようとする力に抵抗します。
これによりシリンダ内には圧力が発生します。(シリンダの内圧)
圧力は、単位面積あたりに働く力のことで、シリンダ内壁面に同じ大きさで一様に作用します。
(パスカルの原理)
シリンダの受圧面積に圧力を掛けたものが、シリンダの出力(荷重)です。
ジャッキの必要油量
ジャッキに必要な油量は、フルストロークしたときにシリンダ内部に入る油の量です。
つまり、シリンダの受圧面積×ストロークが「必要油量」となります。
油圧回路分岐の際の注意点
下記図のようにブランチを用いて、一台のポンプから2本以上のシリンダを動かすため油圧回路を分岐させる場合、同調してラムシャフトは伸びません。
ワークの偏荷重のため、作動油が均等にシリンダ内に送られないためです。
同調させてラムを伸ばしたい場合には、流量制御弁を回路に組込む必要があります。
装置に組み込む場合には油圧での制御ではなく、装置側にガイドを設けるなど安全対策を必ず施してください。
※シリンダの向きが水平や下向き等の場合も同様に流量制御弁が必要です。
荷重を受ける面について
基本的にシリンダに対して垂直に荷重を受けてください。
垂直に受けられない場合は、クレビス等を使用してください。